ビビッと
先日、器を熱心に手に取ってご覧になられているお客様がいらした。
何かお探しですかと声を掛けると、「特に何かを探しているわけでは無いけれど、ビビッとくるものがあれば…」とおっしゃった。
「どうぞごゆっくり…」とそっと奥の作業机に戻った。
自分のことであるけれど最近、日用品などネットで買い物をする回数が増えて、手に取って買い物をする機会が減ってしまったように思う。
スマホやパソコンの画面で画像を見るのと実物を見るのでは視覚的に大きく異なるのはもちろんのこと、触った時の手触りなどの肌感覚、持った時の重さ、バランスなどは手にしないと感じられない。その他にも嗅覚や聴覚、様々な感覚が働いて、なんだか良さそう、だとか、なるほどこんな感じか〜とかを感覚的に捉えるのだと思う。そういう体験を積み重ねて感覚が磨かれていくように思う。だから、店に足を運んで手に取ってみるという行為はとても貴重な体験なのだと思う。
なるべく、ものと向き合う時は気兼ねなく余計なものが入ってこないようにゆっくりと向き合いたいものだ。
自分自身、古道具屋などで店の人に挨拶をした後は放っておいてもらい、沢山のものに囲まれた広い倉庫のような空間でものと向き合うのが昔から好きでワクワクする時間だった。ビビッとくるものがある時も有ればそれが手に入らないこともあり、又次回あれはまだあるだろうかとドキドキしながら訪れたり…
最近そんな感覚、ご無沙汰しているなぁなど考えていた。
真剣に器と向き合っていたそのお客様は暫くすると笑顔で器を差し出した。
しっかりものと向き合いたい人が安心して向き合えるような場でありたいなぁと改めて思うのであった。
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